之山文庫ブログ

2010年7月の記事一覧 : 之山文庫

本告文庫(二)

 本告文庫の目録に掲載されていないが、一連の書籍が本館に所蔵されている。漢文大系21冊、大日本史14冊、温知叢書10冊などの洋装本とともに、160冊ほどの和綴じ本がある。論語、孟子、孝経などの漢籍以外にも、山陽遺稿、南木誌、拙堂文話、歴世女装考、藤公詩存、題林愚抄、西域聞見録、女実語教、明治女大学、毒語注心経、海南遺稿、柳営秘鑑、消息文例などで、明治になって刊行されたものが多いようである。和綴じ本としての保管の難しさから紙魚の被害もあり、利用されることなく今に至っている。これも活用していきたいものである。

繁原 央

本告文庫(一)

 本館に本告文庫と称する寄贈図書があるのを御存じだろうか。一九八八年の「之山文庫だより」16号に当時の図書館長の木宮榮彦先生が「寄贈図書紹介」のコーナーに「故本告亮一先生所蔵本―ご遺族光男氏より―」と題して記している。本告亮一(1890~1987)についても詳しい紹介があり、その蔵書380余冊の寄贈を受けたとされている。寄贈された書物は「本告文庫」目録として1988年に作成されており、205種掲載してある。それらは窪田空穂の高弟の歌人としても活躍され、本学の学園歌の歌詞を作られた先生の姿を伺わせるものといえよう。古書ではあるが活用が待たれる。

繁原 央

三浦文庫(七)

 三浦邦雄の著作に『歌学捷径』というのがある。明治32年11月発行とあるので、邦雄20歳の著作である。背文字に「歌学捷径 完 静篁舎蔵」とあり、この静篁舎は発行所で、水落町三丁目四番地と奥付にあるので、三浦邦雄の自宅にあったことがわかる。販売所は静岡市呉服町の内田書肆、印刷所は静岡市横内町78番地の馬場印刷所となっている。全280頁で、35銭という値段がついている。最初に折込の頁があり「よし野山 道のしをりをとめてこそ ことはの花の おくもわけ見め 豊頴」と本居豊頴の歌の直筆が印刷してある。その次に序文があるが、それは中邨秋香が書いている。当時、中村秋香は御歌所寄人であるので、序文を依頼したのであろうが、それ以上に三浦弘夫と邦雄との交流があったためであろう。例言のあとに「目録」として次の目次を記す。第一章総論、第二章国体と歌との関係、第三章歌は貴賎共によむべき論、第四章題の事、第五章実詠と題詠、第六章出詠用意、第七章古歌を暗誦して其深意を解すべき事、第八章古風近調、第九章歌調及語勢、第十章古歌襲用、第十一章歌の虚実、第十二章枕詞并に序詞、第十三章名所を歌に詠入るる事、第十四章歌学概略、第十五章雅語略解、第十六章辞用格、第十七章仮名つかひ、第十八章歌の書式、第十九章歌の會式、第二十章歌の沿革并に結論。

繁原 央

通釈

  1. 昔の奈良時代の聖武天皇が、天平8年11月9日「橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜ふれどいや常葉の木」とおほめなさった・その橘の木を手本にしよう。さあ吾等、さあ吾等、手本にしよう。
  2. 波がうち寄せる駿河の海の岩陰に籠り、水に沈んで、日の光が当る真珠。その真珠のように心を磨こう。さあ吾等、さあ吾等、心を磨こう。
  3. 真っ青に晴れ渡った青空に、くっきりとそそり立つ富士山。雪が真っ白に耀く気高い姿。その富士山のように清らかに生きよう。さあ吾等、さあ吾等清らかに生きよう。

歌詞の意図

 「常緑の橘を手本として、真珠のように心を磨き、富士山の雪のように清らかに生きよう」というメッセージが込められている。

                               館長 繁原 央

語釈(二)

6. 常葉―常緑の木の葉。

7.たたへ給ひし―おほめなさった。「たたへ」は称えること。賛美すること。

8.鑑にはせむ―手本にしよう。「鑑」は手本、模範。

9. うちよする―「駿河」にかかる枕詞。万葉集巻三に

  「なまよみの甲斐の国うちよする駿河の国と」(319)とある。

  「打ち寄す」は波がうちよせる意味と掛ける。

10.こもり―籠ること。中に入って動かないさま。古事記中巻に

   「大和は国のまはろば たたなづく青垣山こもれる大和しうるはし」とある。

11.しづきて―水の底に沈んで。万葉集巻19に

   「難波の影なす海の底清みしづく石をも玉とそ我が見る」とある。

12.真珠白珠―白玉。真珠のこと。

13.みどりの空―みずみずしい空。青空。

14.まさやかに―「ま」は接頭語。さやか。はっきりしていること。あきらかなこと。

15.そそる―高くそびえるさま。

16.富士のね―富士山。「ね」は嶺。山のいただき。万葉集巻14に

   「筑波根嶺に雪かも降らる」(3351)とある。

17.しろ妙―白い色。万葉集巻10に

   「梅が枝に鳴きて移ろふ鶯の羽しろたへにあわ雪そ降る」(1840)とある。

18.かがよふ雪―かがやく雪。ちらちら光る雪。万葉集巻6に

   「見渡せば近きものから岩隠りかがよふ玉を取らずは止まじ」(951)とある。

19.純ら―清らかなこと。美しいこと。                (つづく)




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