ほころんだ花の香りが流れゆきキミの心へ思いふきこむ

永田穂乃香 島田実業高等専修学校二年

若者らしい感性が表れている。ほころんだ花の香りを心に例えているが、香りと心は密接な関連があり興味深い。(巻口)

猫に似てこたつに入りまるくなる寝てる子猫を横に見ながら

中島悠吾 山梨県立上野原高等学校二年

暖かいコタツのなかで子猫と同化してまどろんでいく、そんな感覚が再現されてくる。また冬の寒さからからも、部屋の生活感覚からも遮断された特別な空間で、詠み手がゆっくりと子どもに帰っていくようでもある。(小野田)

時間(とき)が過ぎ君と過ごした思い出は枯葉となって消え去って行く

穐丸絵美子 山梨県立上野原高等学校二年

過去の思い出は枯葉のように衰え、朽ちてゆくのだろうか。時とともに美しい思い出となることもあるであろうに、淡く儚く朽ちてゆくのを実感することもあるのだろう。人事の記憶を自然の摂理として受け入れている作である。(繁原)

カレンダーもうすぐそこに新年が君と行きたい初初詣

和智翔子 山梨県立上野原高等学校二年

初デートならぬ、初ハツモーデである。新しい恋人の存在が、すべてを新鮮に見せてくれるのであろう。「初詣」すら来年は「初」になるのだという、言葉遊びにはしゃぐ様子が垣間見えるようで、微笑ましい。(瀬戸)

昔見た大きな背中はどこへやら今は曲がった小さな背中

佐藤香織 山梨県立上野原高等学校二年

父親の老いと、子どもの成長を巧く詠みこんでいる。親子の関係が変化してしまったことに対して子どもの側の戸惑いが感じられ、「どこへやら」と昔の父の姿を思わず探してしまうところが面白い。(大場)

霧雨の森に佇む石地蔵一体誰がここに置いたか

相場鴻志 山梨県立上野原高等学校二年

上三句の風景描写に、下二句の人間的な主題が沿うことによって、物語が動き始める。読む者を、ファンタジー小説の誕生の場に立ち会っているような思いにさせる作品である。異色ではあるが、こんな短歌もおもしろい。(平井)

図書館の本の中から探し出す自分の姿写す鏡を

丸 佳樹 山梨県立上野原高等学校二年

「本=紙」からは、本来かけ離れているはずの「鏡」を結びつけている感覚が面白い。本の中の登場人物なのか、それとも物語自体になのか、自分を重ねあわせることができる存在を見つけようとする自己探求の姿勢も伝わり、高校生らしい作品である。(宮本)

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