『教養教育の理念』

 

 現代は、戦後の経済発展と科学技術の進歩によって便利さと物質的豊かさを手にいれました。しかし、その反面、多くの人々がこの物質的な繁栄にくらべ、各人の生活においても、社会全体としても本当の豊かさが実感できないと感じています。また、わが国が物質的に豊かになる課程で、人々の人生にとって何が大切かという価値観が多様化し、自由な生き方が可能になった一方、自分を見失い、家庭や社会の一体感が弱まったり、最も基本的な人権感覚でさえ失われていると言われています。こうした社会全体の目的がはっきりしない時代においては、人々の学ぶことの目的意識が見失われたり、自ら進んで何かを身につけたいという気持ちが薄らいでいるとも指摘されています。

 

 このような社会経済の大きな転換期にあっては、ただこれまで慣れ親しんだ慣例や先例に従うばかりではなく、自分にあった人生とはどんなものか、果たして他者が示してくれたこの道を歩んでいけばよいのかということについて、「自分で考え行動し」、必要なときには毅然とした態度を示し、よりよい組織や社会を築いていく必要があります。こうした力は、講義において示された内容をインプットし定着させることだけではなく、体験的学習における失敗や静かに非日常的な時間をすごすなかで、各自が「我に帰り」内面の自分らしさを発見し表現することで可能になると考えます。

 

 短期大学は専門学校とは異なり、短期即戦力を身につけるだけではなく、長期的人間形成に欠かせない幅広い教養を身につけることを目的としています。教養教育は、単なる専門科目の下地ではなく、専門科目と一体となって専門を生かし広げるためのものであるといえます。

 

 本学では教育目標である「自分で考えて行動する学生の育成」、「人間教育・ライフデザイン」を基礎として、教養教育の重要な柱である特色のある人間教育を行っています。本学では人間力について、人間科学的見地から、知識に限らない幅広い総合力であると考えます。やる気や集中力をベースとした、基礎学力や自己表現力が人間力の基礎にあると考えます。このことは筆頭科目に総合セミナーが捉えられていることにまず現れています。この必修科目で皆さんは、基礎的な学力と自己表現能力のみならず生きるための知恵とライフデザイン力(人間力)を身につけます。フレッシュマンキャンプにおいて、建学の精神や学校生活のあり方を学び、研修センターゼミでは自分の進むべき道を語りあい、座禅を通じて雑念を去り寄る辺となる自分を見つめ直す時間をもちます。さらに、各学年で開講される講座を通じ、自己を発見し他者との理解を深め、社会人としてあるべき姿を培っていきます。また、こうした学習の更なる基礎として、やる気や集中力があります。この持続集中力は、近年低下が心配されており、この充実はいかなることを成し遂げるにも欠かせないと考えられます。これを高めるために、人間科学の教育法に基づいて心身や生活習慣に働きかける参加体験型の科目内容を増やしました。このように楽しく生き生きと実践的に学べるように教養教育科目を改めましたので、皆さんも各科目の中からバランスよく選び、自分自身の源泉や可能性を見出しながら、物事をトータルに眺めることのできる視野、幅広い教養を身につけて欲しいと希望します。

 

 「教養は万古不易、学校で習ったものをすべて忘れた後に残るもの」という至言があります。皆さん、多くのものが残り、また、自分の行き方を考えるすべとして教養教育科目を楽しんでください。